傷病手当金
傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために仕事に就くことができず、その間、事業主から給与の支払いがない場合に、申請により支給されます。
傷病手当金の種類 | 分類 | 法令等 | 支給内容 |
---|---|---|---|
傷病手当金 | 法定給付 法律で定めた給付 |
健康保険法 第99条 |
給付日額×2/3 支給開始日から通算して1年6か月支給 |
傷病手当金付加金 | 付加給付 健保独自の給付 |
健保組合規約 第57条 |
給付日額×14/100 傷病手当金の支給額に、さらに給付金を上積み |
延長傷病手当金 付加金 |
付加給付 健保独自の給付 |
健保組合規約 第58条 |
給付日額×60/100 「傷病手当金」「傷病手当付加金」の受給期間を過ぎても傷病が治らず仕事に就けない場合、延長支給開始日から起算して1年支給 |
支給時要件
①~③のすべてを満たしているときに、支給されます。
①業務外の病気やけがによる療養のため、仕事に就くことができない
②連続する3日間を含み、4日以上仕事に就いていない
③休んだ期間について、事業主からの給与の支払いがない
「正しい療養」も要件です
傷病手当金の支給は、疾病に対する療養の給付(医療機関での治療・投薬等)を行い、労働力を早期に回復することが主な目的であるため、「療養の給付をなすこと」が必要です。以下のような医師の指示に従った「正しい療養」をせず、治療に専念していない場合は、傷病手当金が支給されないことがあります。ご注意ください。
(1)医師から通院の指示が出されている場合は、指示に従い受診する。
(2)医師が薬による治療が必要とし処方せんを交付した場合は、指示に従い調剤薬局で薬を受け取り服薬する。
待期期間
働けなくなった日から起算して、連続した3日間を「待期期間」といいます。
この期間は傷病手当金は支給されません。
待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
第1回目の請求時には、待期3日間を含めて記入してください。
待期3日間の考え方は会社を休んだ日が連続して3日間なければ成立しません。
連続して2日間会社を休んだ後、3日目に仕事を行った場合には、「待期3日間」は成立しません。
支給期間
実際に傷病手当金の支給を受けた期間を通算して1年6か月です。
同一疾病の場合、令和2年7月2日以後に支給開始した方が通算の適用となります。
総支給日数
支給開始日により暦に従って1年6か月の計算を行い 総支給日数 が決まります。
支給開始日 | 支給満了日 | 総支給日数 |
---|---|---|
R5. 08.16 | R7. 02.15 | 550日 |
R5. 09.01 | R7. 02.28 | 547日 |
支給日数のカウント
・出勤により不支給となる期間は、支給日数としてカウントされません。
・報酬や、障害年金又は出産手当金等との併給調整により不支給となる期間は、支給日数としてカウントされません。但し、調整の結果、一部でも傷病手当金が支給される場合は、カウントされます。
・出産手当金を支給すべき場合において既に傷病手当金が支払われているときは、その支払われた傷病手当金は、出産手当金の内払いとみなされ、傷病手当金の支給日数にカウントされます。
同一傷病とみなされる場合
異なる傷病名でもその実態に明らかな断絶が認められないときや、第一傷病を原因として第二傷病が発生したという因果関係がある場合は同一傷病とみなされます。また、復職していても、同一傷病での治療が続いている場合は治癒とみなされません。
けがは治ったものの障害が残り、労務不能となったとき
労務不能ではあっても、療養のためではないので、健康保険の傷病手当金は支給されません。なお、症状が固定し、その障害の程度が国民年金法および厚生年金保険法により定められている障害等級表に該当する場合には、国民年金の障害基礎年金および厚生年金の障害厚生年金あるいは障害手当金(一時金)が支給されます。
支給される額
算定基礎日額
支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額。
入社間もない方など、支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合は、いずれか少ない方の額を使用して計算します。
A.支給開始の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
B.支給開始の属する年度の前年度9月30日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額
傷病手当金
欠勤1日につき「算定基礎日額」の3分の2に相当する額。
(例)算定基礎日額(240,000 ÷ 30日) × 2/3 = 5,333円
傷病手当金に係る付加給付(退職後の継続給付の場合は対象外)
付加給付とは、健保組合が独自の規約に基づき、法定給付に加えて任意に行う一定の給付のことです。
●傷病手当金付加金
欠勤1日につき「算定基礎日額」の100分の14に相当する額。
(例)算定基礎日額(240,000 ÷ 30日) × 14/100 = 1,120円
●延長傷病手当金付加金
「傷病手当金」「傷病手当金付加金」の受給期間を過ぎても傷病が治らず仕事に就けない場合、さらに最大1年延長して給付金を支給します。
欠勤1日につき「算定基礎日額」の100分の60に相当する額。
(例)算定基礎日額(240,000 ÷ 30日) × 60/100 = 4,800円
支給調整
傷病手当金等(傷病手当金、傷病手当金付加金、延長傷病手当金付加金)は以下の支給がある場合に調整(減額)されます。
支給調整
傷病手当金等(傷病手当金、傷病手当金付加金、延長傷病手当金付加金)は以下の支給がある場合に調整(減額)されます。
調整項目 | 備考 |
---|---|
1. 事業主から報酬の支払いを受けている場合 | 報酬が支払われている場合でも、その金額が傷病手当金より少ないときは、その差額を支給します。 |
2. 出産手当金・出産手当金付加金を同時に受けた場合 | 出産手当金の給付が優先となり、出産手当金の額が傷病手当金より少ない場合は、その差額を支給します。 |
3. 障害厚生年金または障害手当金(同一疾病のみ)を受けている場合 | 障害厚生年金の額(障害基礎年金も受給している場合は合算した額)の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額を支給します。 |
4. 労災保険の休業補償給付を受けている場合 | 休業補償給付金の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額を支給します。 |
5. 退職後の老齢(退職)年金(特別支給も含む)を受けている場合 | 老齢退職年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額を支給します。(在職中は調整しません。) |
給付金の支払い
資格喪失後は、給与の有無に関係なく、健保から直接振込となります。
在職中 | 資格喪失後 | 死亡喪失後 | |
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振込口座 | 給与口座 | 本人口座 | 相続人口座 |
振込方法 | 事業主経由 | 健保より直接 | 健保より直接 |
振込日 | 給与支給日 | 月末日 | 月末日 |
退職後の継続給付
退職すると被保険者の資格を失い、健康保険の給付を受けられなくなりますが要件に該当すれば、保険料を納めなくても給付が受けられる場合があります。
支給要件 | 備考 |
---|---|
1. 資格を喪失した日の前日まで継続して1年以上被保険者であったことが必要 | 任意継続期間は含まない |
2. 退職日当日に傷病手当金を受け得る状態にあることが必要 | 報酬との調整により支給されない場合を含む |
3. 在職中に傷病手当金を受けていた時と同一疾病によって退職後も労務不能状態が続いていること | 病名が違っても、症状や原因が同じものは同一疾病となります |
4. 支給開始日から通算して1年6か月の範囲であること | 1日でも「受給できない日」があれば、同一疾病で再び労務不能になったとしてもその後の傷病手当金は支給できません。退職後は断続して受けることはできません。 |
5. 失業給付(雇用保険)の給付を受けていないこと | 失業保険の給付を退職後に受給したことは、労働の意思及び能力があったという認定がハローワークでなされたのであって、労務不能の支給要件に当てはまらない。 |
退職後給付 | 法定給付 | 付加給付 | 延長付加 |
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退職 | ◯ | × | × |
任意継続加入 | ◯ | ◯ | ◯ |
障害年金のご案内
傷病手当金受給者や疾病・負傷により療養中の方が、障害年金制度の仕組みや事後重症請求(障害認定日時点では障害年金の等級に該当しないが、その後、症状悪化で障害年金の等級に該当した場合に行う請求)などの請求方法を知らないため、障害年金の請求が遅れてしまう場合があります。請求が遅くなると受け取り可能な年金総額が減少する可能性がありますので、請求は早めに行ってください。
初診日から1年6か月以上経過し、かつ、障害年金の等級に該当している場合は、障害年金を受給できます。
初診日から1年6か月以上経過していれば、その後、65才までのいつの時点で障害年金の等級に該当しても、障害年金を請求できます。
障害年金のご案内(日本年金機構)
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